強さの秘密2012/09/15 16:46

和紙の強さ・さらに補強するいろいろな技について、これからちょっぴり勉強してみる。ひとまず再度油団の画像投下。これが100年近く前の敷物だとはとても思えません。カーペットじゃないんですよ奥さん、紙なのよこれ。
以下
【和紙の手帖】全国手すき和紙連合会発行:よりちょこちょこと引用
和紙はなぜ洋紙より永く保存できるのでしょうか
・日本最古の紙は大宝二年(702年)の日付のある美濃、筑前、豊前で作られた戸籍に使われた紙(正倉院にある)。
・それに対して、19世紀中頃から普及した機械生産による洋紙は傷みがはげしく、貸し出せば補修もできないほど劣化がすすんでいる

そう。
和紙はなんと、うまくつくって保存すれば千年以上の寿命を誇る超・丈夫で長生きな紙なのでした。すごすぎです。

洋紙と和紙、植物由来という点では同じなのですが、ではどこに違いが?
そもそも強い紙とは、どのようなものを言うのでしょうか。

植物体の主成分は
セルロース
ヘミセルロース
リグニン
などなど。

この中のリグニン、紙の保存性においてはちょっと邪魔者のようです。
親水性が高い(水に馴染みやすい)ゆえに紙を弱くし、光や酸素からの影響を受けて変質しやすい。つまりこのリグニンが少ないほど保存に適しているといえます。
また、紙の繊維は重合度が高く、結晶化度の高いものほど長持ちするものだと言われています。
重合度が高い=構成単位の繰り返し(ユニット)の数が高い、つまり分子量が多い
結晶化度が高い=結晶領域の割合が高い、強く結合している場所が多い

えーとわかったようなわからないような(化学苦手 笑)
つまり強い結合体がたくさん、これまた強く繋がってて、その強く繋がってる領域が広いので強いってことでしょうか(たぶん)。あやふやな説明で申し訳ありませんが、確かなのはこういう強力な結合体を作ってしまう「自然の力」が本当に凄い、ということです。

さて先ほどの19世紀中頃に作られた洋紙の劣化理由。この頃の洋紙の原料は木材をまるっと砕いて作る砕木パルプを使っていたため、繊維が粉砕されて傷んだところにリグニンが作用して劣化を進ませたようです(今はこのリグニンを取り除く処理を行なっている)。

これに対し、伝統的な手漉き和紙に使われる楮や雁皮などの靭皮繊維は、もともとリグニンが少ない。さらにその少ないリグニンを除くのに、草木の灰や消石灰などを使ってゆるやかに処理するため繊維を傷めない。ようは植物体が本来持つ強さを、人の知恵が補強した形。いわば人と自然のコラボ作品といってもいいかも。しかも千年以上も前に、ですよ。うーん素晴らしい。

ところで私、何でも自然が一番イイ!とは全然まったく思っておりません。洋紙の工法も、現在では大変素晴らしい技術です。何と言っても全世界に普及しているスーパーヒット工業製品。上質で使いやすい・扱いやすい紙を廉価で手に入れることが可能な現在の状態を作ったのもまた、沢山の人のたゆみない努力と英知であります。

では今、このような世の中において、手間暇かかる手漉き和紙をつくる意味とは何なのでしょう?

自然は本来、怖いものです。圧倒的な美しさと気高さをもつ反面、圧倒的な恐怖と残酷をも与える。だからこそ自然災害の多い日本では、自然を神となぞらえて、畏敬する対象としてきたのでしょう。絶対に敵わない相手に真っ向勝負を挑むのではなく、受け容れる。畏れかしこみ、ひたすら謙虚に、しかし卑屈にはならず、時にはその途方も無い力を借り、鎮めるべきところは鎮め、うまくつきあってきた。今も日本と日本人の中に生きているその在り方を「伝統」と呼ぶならば、伝統的工法で紙を漉く、その行為そのものが伝統を「実行」することといってもいいのではないでしょうか。

紙、というのは元々「神」なのでは、と別の記事でも言いましたが、やっぱりそうなのかも。自然から学んだ、お借りした技をつかうとき、その技に触れるとき、その技がどういう仕組なのかを考えるとき、人は「自然=神」の本質といっとき繋がることが出来るのかもしれない。そうであるならば「伝統的工法の手漉き和紙」は、日本という国を形作る上での大切な要素のひとつといえます。

あれ、油団のこと全然買いてない・・・和紙の秘密シリーズまだまだ(不定期に)続きます。

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