続いてきた理由 五2015/09/04 12:34

晴れ間もつかの間、不安定な空模様の9月ですね。

さて渡来人の数についてですが、公式の記録に残っているのは、当時の王族と親交があり政治力かつ統率力のある指導者の下にまとまった大きな集団の話だけで、具体的な人数の記載などはないようです。なので正確な数は不明ですが、この時代の急激な人口増加から推測すると、一説には100万~150万人もの人数が入ってきていたとも言われています。

折しもシリア難民の問題がニュースで盛んに取り上げられていますが、今よりずっと人口が少なく土地も余っていたであろう時代の日本でも、言葉もろくに通じない、見ず知らずの外国人集団を受け入れるのはやはり大変なことだったでしょう。少数なら同情もし手厚くもてなしたかもしれませんが、現在の移民問題と同様に、伝手をたどり次から次へとその数を増やすうち、記録に残らない程度の小競り合いや揉め事の類はいくつも起きたことでしょう。だからといって帰る場所はもうない。それにせっかく戦乱を逃れてきたのに、ここでまた争い殺しあうのはあまりに愚かだし、双方にとって不幸だ。ではどうする?

お互いに「利」のあるつきあいをしていくしかない。

誰にとっても役に立つ技術をもってさえいれば、出自にかかわらず、どこにいっても生きていける。さらに技術を独り占めするのではなく分け与えるという姿勢であれば、むしろ歓迎され、良い関係を築いていけるし、技術を生業として長く継承していくこともできる。渡来人たちが単なる戦争難民ではなく、職能集団としての性格を濃くしていったのは、必然の流れだったのでしょう。国籍も、地位も身分も性別も関係なく、力で抑えこむのでもない、役に立つ技術によりあらゆる土地・あらゆる階級の人々と交流し、思うままに融合したり離れたり、という生き方は、ある意味究極の自由人ともいえるかもしれない。最初の頃一族で固まって暮らしていた渡来人たちが次第に各地へと広がり散らばって、国と人とに溶け込み、ともに現在の日本国と日本人を形作って来られたのも、ひとえにこの、枠にはまらない「職人気質」な生き方を選択したおかげなのでしょう。

その「職能」のひとつであった製紙業。越前和紙の発祥は伝説によると、
「川上からやってきた、綺麗な着物を着た女性」
から製紙法を習ったのが始まりだとされています。
女性の正体は不明で、継体天皇のおつきの女性であるとか、諸説ありますが、明らかに土地の人間ではない、どうみても富裕層といった外見の女性が突然現れて手ずから技を教え、またいなくなったという話は、まさに当時の職能で生きる人間の動きそのもの。性別関係なく、自由にあちこち移動しつつ、ここと決めた土地に技術を根付かせ継承させていくという生き方にぴったり合致しています。
川上御前を紙祖神にいただく越前和紙の里では、紙を漉く主力は女性です。紙漉きに必要な綺麗な水が豊富にある、という好条件がある土地に根ざした産業ではありますが、昔から決して閉鎖的ではなく、常に新しいものへの好奇心を失わず、来るものは拒まず、必要とあらばどんどん外に出ていく、という開かれた場所でもあります。

それにしても、川上御前なる女性は、なぜこの土地を選んでくださったのでしょう。綺麗な水が豊富にある、ということは大きな理由だったのでしょうが、見つけるきっかけはなんだったのか。元々そういう土地を日本各地に探しまわっていたのか、それとも誰か紹介者のようなものがいたのか。いずれにせよ、川上御前がたまたま?この土地を選ばなければ、今そこに集落は存在しなかったかもしれない。今これを書いている私もいなかったかも。あえてそれを運命とは呼びません。つくづくと、先人の「判断」と「選択」に感謝です。


                             >>以降、不定期に続く

有限と無限2015/09/25 19:04

雨の中、行ってまいりました。
ニコライ・バーグマン伝統花伝」@シャングリ・ラ ホテル東京27階、最終日でした。

デンマークはコペンハーゲン生まれのフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏の新作披露展覧会で、日本の伝統工芸品や美術作品がコラボレートされてます。そのひとつが人間国宝・岩野市兵衛さんの和紙。
こうして見ると生クリームののったケーキのよう。上からのぞくとミルフィーユの如く和紙が幾重も層をつくっています。和紙も元々は植物なのでお花には馴染みやすいのでしょうか。半端ない一体感でした。これだけはむしろお花より紙が主役のような、という印象は身内びいきか?一緒に行った長女は「市兵衛さんの紙がこんなに…何かもったいない」と。
シャングリ・ラ ホテルのビルは東京駅の真ん前という絶好のロケーションですが、26階まではオフィスが入っていて、エントランスは意外なほどこじんまりしています。ですが一歩入ればそこはさすがの5つ星。それはそれはゴージャスで贅沢な空間が拡がっておりました。
27階の会場には、そのラグジュアリーな雰囲気に負けないばかりか、更に引き立て更に輝く、華やかでゴージャスな作品の数々が展開されておりました。写真がうまくなくて申し訳ない。






実物はもっと色彩豊かでキラキラしていました。作品はもちろんのこと、ライティングの技術も素晴らしい。まさにプロの仕事!

このフラワーアート、生きた花を使っている以上、絵画や彫刻のように保存することはできない。花がその命をまっとうする前に、展覧会も「終わらなければならない」。非常に儚いアートです。いっぽう今回コラボした伝統工芸品たちはそれほど短い命ではない、和紙、焼物、漆器、織物といった、ともすれば人の寿命を遥かに超えてその姿を保ち得るものばかり。花はその命の短さ故に、その瞬間の美を切り取って最大限に発揮することに意義がある。器と成る工芸品にしても永遠にその姿を保つものではなく、二度と同じ花に出会うことはない。有限であるもの同士だからこその一期一会は、その空間を精魂込めてつくり上げる人がいる限り、無限に生まれ、続いていく。

外国人ビジネスマンも多く行き交う東京丸の内、近代的なタワービルの中に構えたシャングリ・ラが、彼のアートを採用している理由がわかるような気がした。エントランスやホール、廊下などはもちろんお部屋の中にも置いてあるらしい。うーん、泊まってみたいものだ。

とにかく圧巻の展覧会。雨だけど行ってよかった!画像は私のへったくそなやつより、ネット上に沢山きれいなのが落ちているので検索してみてください。あの色を出すのはさすがのiPadさんでも難しかった…というか私が使いこなしていないだけかも。