引き寄せるもの ― 2013/09/04 17:36
「和紙文化辞典」 久米康生・著 発行:わがみ堂

古書店で偶然この本を目に留めたとある方が、私と私の実家のことを思い出して送ってくださった。
わがみ堂、とは東京都文京区にある「和紙のわがみ堂」。装丁はもちろん和紙。著者の久米さんは元毎日新聞記者で、退職後から和紙の研究に専念され、去年まで和紙文化研究会の代表でいらした方。
大体が和紙というのは昔から、特殊技能故に常に時の権力者の庇護を受け、基本的に門外不出とされていた。そのせいで技術的なことのみならず歴史そのものもあまり多くの人に知られることなく、必然的に学問として専門的に研究されることもほとんどなかった。
確かに、和紙関係の本というのは探してみると、意外なほど少ない。私の知っている数少ない本には、必ずやこの久米さんの名前がある。和紙、特に昔ながらの手漉きの和紙は本当にごく一部の方の熱意により消えずにここまで来たのだなあと実感する。
しかしこの辞典、実にタイムリーで驚いた。私は紙漉きの家に生まれ育ったものの、ただそれだけで、紙漉きのことについて何も知らない。川上御前の御名を借りながらこのていたらくではいけない、と近年になって慌てて勉強している最中である。全国の和紙や道具や技、著名な職人の名前、製法の説明、全国の紙郷分布、歴史年表、和紙文化関係の主要文献に至るまで索引つきで掲載されているこの辞典、まさに今の私に必要な本だ。何かこう、逃れられない縁に引き寄せられたような、そんな気がする。
師匠、ありがとうございました。精進いたします。
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